書籍市場は回復

2019年は年間を通して書籍は好調な年で、業界は期待を膨らませて2020年を迎えました。しかしコロナ危機とそれに伴うロックダウン、書店の閉鎖のため、市場はどの分野も急激に落ち込んでいます。それでも6月以降、ヨーロッパの書籍市場はかなり回復してきました。2020年のマイナス幅がどれくらいになるかは、最終的にクリスマス商戦にかかっています。

 

例えば、フランスの書籍市場は、昨年同期比で最初の3四半期末の売上が7.2パーセント減を記録しました。ロックダウン中、損失はさらにマイナス66.8パーセントになりました。しかし店舗が再開してからは、数値は大幅に上向いてきました。スペイン、スイスおよびポルトガルは2020年の最初の数週間で増加も記録し、スペインは実に2.9パーセント増となりました。当初の各種制限の間に収益が半分以下に減少したケースもあり、ロックダウン後の段階になってもまだ完全に回復できていません。

 

スイスでは、最近になって収益も回復基調になってきたので、現在の全体の損失はマイナス2.9パーセントにすぎません。スペインとイタリアでも、夏季の間に読書を楽しむ流れが続いているため、最初の9ヶ月間の損失は、今ではそれぞれマイナス11.0パーセントとマイナス3.8パーセントに縮小しました。非常に驚くのはオランダの書籍市場で、9月末の時点で全体として5.8パーセントの増加を記録することができています。上記の数字はすべてGrowth from Knowledge Entertainmentからのもので、9月に開催されたフランクフルトブックフェアの準備段階で収集されたものです。

 

出版業は経済界全体よりも好調

「Branchen-Monitor Buch」によると、ヨーロッパ最大の書籍市場であるドイツも同じような状況です。ロックダウンにより生じた売上の落ち込みが激しいときもあり、4月には33パーセントでした。しかし6月以降は着実な上昇基調にあります。10月までの書籍の売上は5.4パーセント減でしたが、1.9パーセントの物価上昇を加味すると売上の下落は3.5パーセントでした。小売書籍販売では売上は7.9パーセント減(1月から10月までの累計)で、全体のトレンドはまだ完全に反映されていませんが、ここでも基調は上向いています。全体として、書籍小売部門は経済全体よりも好調となっています。

 

すべての流通チャネルで製品グループを見てみると、前月同様10月には児童書・青少年向けの本と小説が際立っています。児童書と青少年向けの本はここ数ヶ月間好調になりつつあり、現在では成長率11.3パーセントとなっています。小説は10月の次点の勝ち組で、売上は8.6パーセント増でした。しかし2020年の最初の10ヶ月間を見ると、児童書と青少年向けの本だけが6.8パーセントの成長を記録しました。売上の最も高い製品グループに入る小説は、累計で2.3パーセント減でした。コロナ関連の旅行制限の時期に、旅行書が大打撃を受けたのは当然といえるでしょう。このグループの売上の落ち込みは25.8パーセントでした。

 

「この数ヶ月、子供や若者向けの書籍の需要が大きいことから、危機の時代に書籍はこの分野で重要な役割も果たすことが明らかになりました。雇用を提供するだけでなく、教育を可能にし、サポートも提供するのです。これからも社会に貢献し続けるために、書籍には特に視認性と確固とした枠組条件の2つが必要です」と、German Publishers & Booksellers AssociationのGeneral ManagerであるAlexander Skipis氏は強く訴えています。

 

売上の低下を防ぐ

フランクフルトブックフェアのために、ドイツ企業Media Control社は初めて1分あたりの書籍購入という特別な評価を行いました。ロックダウンで大幅に売上が減少したものの、直近3ヶ月間でドイツ語圏の書籍市場では1分あたり794冊の本が売れました。これは2019年比で10パーセントの増加となります。昨年、ドイツ語圏の書籍市場では1分あたり平均715冊の本が売れました。

 

ドイツ語圏の書籍市場で最も好調な月は8月で、1分あたり871冊の本が売れました。「Media Control社のデータから分かることは、書籍業界は売上の低下を防ぐためにできることをすべて行っているということだ」とMedia Control社のHead of BooksであるDeniz Ulucan氏は強調しています。しかし、書籍市場について今年全体でどうなるかは、大部分は来るクリスマス商戦にもかかっています。

 

ユネスコによる書籍の価値の評価

書籍はユネスコから間接的な評価を受けています。オーストリアのユネスコ委員会は無形文化遺産として製本技術を評価してきました。その技術は世界中で図書館設置の礎となり、そうして人類の知識を顕在化し記録保管してきました。このような背景から、現在の課題は国際的な「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」の候補に製本技術を指定し、その登録を推し進めることです。

 

敬具

Knud Wassermann

『Graphische Revue』Editor-in-Chief